「君がそんなに原作が良かったって言うんなら、私も見てみたいな。」
 と奥富に言われてとまどいました。

 チャーリーとチョコレート工場。

 ☆

 確かに、子供のころかなりはまって何度も読み返したお気に入りの一冊でした。
 すごく面白かったと思う。
 だけど、子供の頃読んだ本って、ちゃんと記憶してない事が多い。

 子供の頃ってわからない事はすっとばしてるし、気にいった所ばかりを妙に覚えてるし。

 私にとって長い間パール・バックの「大地」は貧乏人の成り上がりサクセスストーリーでした。
 大人になって読み返したら一つの家の隆盛になぞって文化革命を描いた大作でした。
 そんなん、小学校2年だった子供にはわからんて。
 小学校高学年向け名作全集には初代の話しか載ってなかったしな。
 一番気にいってたのは、主人公が革命を訴える革命家から、せっせと檄文をもらって帰る所。檄文が読みたいのではなくて、なんでも手作りする嫁さんが靴の底にするのに紙が欲しいと言うので、もらえる紙はなんでもありがたくもらってたって話。
 子供の私には魅力的な話なんだけど、ストーリー全体としては、見どころは他にもいっぱいあるんだ。
 ただ、子供の私に理解できてなかったんだ。

 まあ、そんな感じで。
 チャーリーとチョコレート工場も、子供の頃読んだきりなので、今読むと違うんだろうな。

 ☆

 チャーリーとチョコレート工場の予告を見て驚いたのは、まるで主人公が工場長だった事だ。
 私の記憶では、チョコレート激ラブなビンボッタレ小僧が一生チョコレートに困らなくなるラッキーストーリーだった筈なのに。
 それに、私の記憶では、チョコレート工場の中はチョコレートの川が流れ、チョコレートで出来た草木がおいしげり、歌の好きなチョコレート色の小人が働いてたんじゃなかったの?
 私の記憶じゃ、チョコレート色一色だったんだけど。
 なんてカラフルな予告画面。

 私が原作と違う、私は原作が大好きだったのに。
 と何かの映画で予告を見た後しつこく言うておったら、冒頭の奥富の言葉に続いてしまったわけです。
 ぎゃ。

 いや、あの、確かに子供の私は夢中になって読んだけど・・・・。
 ちゃんと読んでたのかな、子供の私。
 あわあわ。

 と思いつつ、奥富と映画デートの約束をとりつけました。
 だって、私が歩いていける駅前の映画館で上映してないんだもん。
 誰か、車持ちとデートしなくちゃ観れないんだもん。

 ☆

 映画観賞後。
 土曜のレイトショーなんぞをみたら、えらい事人が多くて、場内が明るくなってから出口にむかっても四方に人の多い事。
 奥富と二人、ぼそぼそと、どうでもいい感想をのべあう。

 そして、出口から出て、まわりの人気が減ってから、ぽつりとつぶやく。
「子供の頃は気が付かなかっただけなのかな。
 今読んだら原作も映画の通りなのかな。
 ・・・淋しい工場長が美少年をゲットする話・・・なのかな・・・。」

 ふりむいて私を見る奥富の目がきらきらと輝いていた。

 おお、われら腐った乙女。
 おお、われらオタクなヤオイスキー。
(はい、大きな声でリピート3回)

 ほんと、子供の頃の記憶では工場長の事はあまり残ってないんだが。
 原作もあんな話だっけ???
 帰路の間、ずっと目を輝かせて児童文学を腐った角度で語り合いました。

 腐った友よ、どうぞ。

 そんで、この映画見てて思ったんですが、やはり私は健気な子供に弱いんだー。
 3回泣きそうになりました。
 もう、過去に何万回も見たような「どうだ、健気な子供だろう」って演出の所。
 すっごいありきたりなんだけど、こういうの何度観ても泣ける。
 好き。
 健気な子供好き。
 家族愛って泣ける。
 ジジババはいい。
 ジジババが4人も出てくるんだよ。
 愛はあふれてるが何も出来ない無力な年寄りがいい。
 
 腐ってない友も、どうぞ。

 あと、子供にみせたいなあ、こういう映画。

 絵面もよかったよ。
 雪の中、タイヤの後まで計算されつくしてて。
 色センスがあると派手な色を使いまくっても下品にはならんのだなあ。

 ほんと、良かったです。
 
 

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