ただ、ただびっくりしました。

 舞姫ってみなさまはいつお読みになりましたでしょうか。

 私ははっきり覚えています。
 小学4年の国語の授業でした。
 教科書にのってたんだか、先生がプリントを配ったんだか覚えてないけど、授業の教材。

「豊太郎は間違ってる。
 相沢が正しい。」
 と授業中に発言し、教師から
「ええ〜?
 そうかなあ?
 相沢が正しいかなあ?
 だって相沢は恋人達の仲を裂こうとしてるんだよ?」
 とにこにこと問われたのをはっきり覚えているからだ。
 同級生達は誰も
「庭さんと同じ意見です」
 とは言うてくれんし、私は自分の正しいと思う事しか言えないお子様だった。
 小説の感想がみんな同じでなければならないなんて言う国語の授業はいかがなものかと今は思うが、当時は
「なんで?
 なんで豊太郎が間違ってて相沢が正しいのに、誰もそうですって言ってくれないの?
 なんで先生は
『はい、ここはそうですね』
 って言ってくれないの??」
 と大変辛かったのを覚えています。
 だってお子様だったからね。
 今思えば先生は小四の子供が必死に相沢が正しいと訴えるのが面白くてねちこく
「相沢が正しいの?」
 と聞いてたんだろうけど。
 その時の先生を覚えてるので、小四で読んだなあと覚えております。
 他にも、当時の小学校の教科書って
「これを子供に読ませるか?」
 って教材多かったよねえ・・・。

 さて、観劇後に年下(たぶん、7〜8才くらい年下)の友達とおしゃべりしてたら、彼女も国語の教科書に載っていたと言うていた。

 かなりの人が、教科書で原作は読んでいるんじゃないでしょうか。
 
 で、ですね。

 ちがうよね、景子先生の舞姫。

 もう、もう、びっくりしました。

 プロット、ストーリー進行はほぼ原作のままです。

 ままなのに、テーマとキャラクターが違うから、まるっきり別もの。

 森鴎外の舞姫と景子先生の舞姫は同じストーリーなのに、全くの別物でした。

 もう、もう、びっくりだよ。

 同じストーリーでここまで違うものが作り上げられるなんて、びっくりだよ。

 これがいいか悪いかは別として。

 景子先生の舞姫は全く素晴らしかった。
 
 森鴎外の舞姫は読後感も悪く、嫌な気分になる物語りだった。
 だって鴎外のは人間の弱さ醜さを描く物語だったから。

 景子先生の舞姫は一人の青年の美しくもはかない恋を描く物語だった。

 景子先生の舞姫は全く素晴らしい。

 だけど、景子先生の舞姫は鴎外の舞姫を台なしにしてるよね。
 鴎外の書こうとしたテーマを捨てて、美しく仕上げた舞姫。

 私は観客として景子先生の舞姫は素晴らしいと思う。
 原作通りだったら、観てて辛いし、だいたい金払ってまで嫌な気分になりたい人間なんてそうはいないだろう。

 原作を台なしにして、観客を喜ばせる美しい物語りにした景子先生は商業作家として正しい。

 だけどこれ、鴎外が観たら、辛いだろうなー。
 自分の書いたものを全否定されたようなものだもの。

 で、原作を読んで、作家の書こうとしたものが何であるかを知ってる者としては、景子先生の手腕をたたえたくもあるけれど、作家としてここまで他者の作品を踏みにじるのはどうなんだろうとも思ってしまうよ。

 と、パロディ同人やってた人間が言うのもなんだけど・・・。
 パロディ同人は原作をねじまげてるのが前提だからさ・・。

 景子先生のやった事は正しい。
 客の喜ばない原作を客の喜ぶ美しいものに作りかえたのは正しい。

 景子先生はすごい。
 原作と全く同じストーリーでテーマとキャラクターだけを変えて仕上げるこの手腕は秀逸だ。

 だけど、作家として他人の作品をこうまで台なしにするくらいなら、普通にオリジナルで脚本描いても良かったんじゃないのかなあ・・。

 それとも、どうしても、舞姫を美しく作り替えたい何かがあったのかなあ。

 景子先生ってお茶会とかないのかしら。
 直接御本人のトークが聞きたいわあ。
(スカステでナウオンやってたんだろうけど、録画してないんだ。録画しとけば良かった。何か言ってらしたのかなあ?)

 原作を台なしにしてるのには疑問を持ちますが、あの原作を美しくはかない恋物語りに仕上げた手腕には、ただただ感嘆いたします。
 
 私やっぱり景子先生好きだなあ。

 毒のない美しい作品は、観てて楽です。
 
 いや、エリスとかエリスとか、壊れた人間観てるのは辛いけどね、でも、やっぱり景子作品には毒がないと言っていいと思うし。

 子供の頃は
「相沢は正しい」
 としか思ってなかったんだけど、景子先生の舞姫を観ると
「相沢は豊太郎に惚れてるとしか思えん」
 との感想を抱いてしまいます。

 私、ドイツで友達が困ってるからって迎えに行くかなあ・・・。
 まあ、何人かくらいの友達には「死ぬか生きるかだったら飛んでいく」と思えるけど。
 仕事うっちゃって恋人と同棲ラブラブなところに
「新しい仕事の世話して、悪い恋人と切れるように手配しに」は行かないなあ・・・・。
 原作のだと、主人公はほっとくとのたれ死にしそうな感じがしたので、そりゃあ友達なら海外に行くのが大変な時代であっても迎えにも行くよねって思えたんだけど。

 子供の頃は、がんとして

「豊太郎は間違ってる。
 相沢が正しい。」

 って言ってたんだけど。

「・・・相沢・・・
 あんた、豊太郎に尽くしすぎ・・・」

 って思ってしまいますです。

 これなら宝塚初心者や非宝塚ファンの友達も誘えると思えるお芝居。
 
 良かったです。

コメント

nophoto
魔法使いの弟子
2007年6月30日15:19

なぜかログアウト状態になってます。

舞姫、読みましたよ。中学か、高校の国語で。
文章の美しさにすごく感動したのは覚えていますが、相沢って誰なのか覚えていません。

小学校で習ったことの方が昔なのに記憶にのこっていますよね。

庭りか
庭りか
2007年6月30日17:43

ヤフーもミクシィもなんでか時々ログアウト状態になりますよね。なんででしょう。

相沢って名前では覚えてなかったんですが、主人公の親友がいたのは覚えてますか?
主人公がドイツでべそべそしてたら、そんなんじゃダメだーって主人公を迎えに来た男です。

nophoto
魔法使いの弟子
2007年6月30日23:29

記憶といえば、美人のドイツ人と日本人の恋の話で、最後はかわいそうな終わり方だったということくらいで(「菩提樹下」とかいう本筋と関係ないコトバは覚えています)。

でも、おぼろげに誰か日本から来たのを思い出しました。

恋愛ものと見せかけて、実は男の友情物語!?

庭りか
庭りか
2007年7月1日0:04

それが、宝塚版では友情と言うにはあまりにも相沢の愛がだだもれで・・・げふんげふん。

主人公が相沢の名前を言ったとたん、女が嫉妬に狂った顔をみせるんですよ。あれはどういう意図の演出だったのか。