豊饒の海4部作の第2作。

「春の海」で悲恋の末死んだ松枝君の生まれ変わり飯沼君が主人公。
 飯沼君はクーデターを目論みますが、若く清い飯沼君の本当の目的はクーデターを成功させる事ではなくて世の中を自分の信じる方向へ導くために何かして、最後に夜明けに日輪の中で美しく自刃する事、だったのでした。
 もうこの段階で私には主人公が全く理解できないわけですが。

 さて、松枝君の親友本多君は水浴びしてる飯沼君の身体に親友と同じほくろを見て、親友の生まれ変わりだと確信します。
 飯沼君の父親飯沼父は「春の海」では松枝侯爵家の書生をしておりました。
 飯沼父は松枝君におつかえしていて、松枝君に激ラブ。
 本多は、てっきり飯沼父も飯沼君のほくろに気付いて、わが子が若様の生まれ変わりだと気付いているだろうと思ってました。
 が、飯沼父はいいやがるのです。
「私は若様の背中一つ流して差し上げた事はありません」
「何故」
 と問う本多に飯沼父は答えます。
「若様の身体というものを、……私は、まぶしくて、ただの一度も直視したことがなかったのです」
 春の海読んでた時から、そういうキャラクターだとは思ってたけど、やはりそうか。
 
「春の海」「奔馬」は共に主人公の考えてる事は全くわかりませんが、細部細部が美しく、美味しいです。


 三島由紀夫は中学の頃に幼なじみがはまっててたので、私も読んでみようかとトライした事がある。
 だが、当時の私には全く読めませんでした。
 今考えると、文章が難しいとかではなくて、主人公の考えてる事が全くさっぱりわからなくて読めなかったんだと思う。
 今は歳とったせいか、主人公の考えてる事が全くさっぱり理解できなくても、読むだけは読めるから。
 ちなみに今さら再トライしたのはうちの若いアシスタントちゃんが三島由紀夫が好きだと言うてたから。
 私は誰かに興味を持ったり理解しようとした場合、相手の愛読書を読んでみる事にしています。

 が。

 幽霊が好きで、UFOが好きで、友達が来たらおもてなしにホラービデオ流してて、趣味がコスプレで、部屋にはフィギアが並んで、三島由紀夫が好きて。
 キャロル、おばちゃん君の事を知れば知るほど君の事がわからないよ。

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