豊穣の海4部作の第3作


「曉の寺」は第一部と第二部に別れてます。
 
「奔馬」で飯沼君を救うために検事として積み上げてきた物を全て投げ打って弁護士になった本多君。
 数年後には弁護士としてそれなりの成功をおさめてました。
 仕事でタイへ行った本多君。
「春の海」で飯沼君と松枝君はタイから留学して来たタイの王子様達とお友達になってました。
 本多君はお友達王子様の娘、月光姫(幼女)に会いに行きます。

 松枝飯沼君は今度はタイでお姫様に転生してました。
 幼い月光姫は前世の記憶があって、本多君に日本に連れて帰ってくれとせがむのです。

 前世の記憶があるわりには、月光姫日本語わかんないんだけど。

 この第一部はわりと好き。

 幼女に転生して自分にすがりついてくる親友をどうする事もできない(現在一国の王女様なわけだし)本多君。


 さて、嫌になってくるのが第二部。

 第二部ではちょっとありまして、本多君は大変な資産家大金持ちになってます。

 月光姫はお年頃になって日本に留学して来るんですが、成長した月光姫は前世の記憶がありません。


 月光姫の脇腹にも親友と同じ転生の印のホクロが無いか確かめたい本多君。
 最初はそういう理由だった筈なのに、結局は月光姫の裸が見たい一心になってしまう本多君。
 エロエロのぞき魔になってしまう本多君。

 月光姫の方はといえば、怠惰な女になってます。
 時間も守りません。

 どっちも人間の嫌な部分、醜い部分が描写されてます。

 この「曉の寺」第二部と続く「天人五衰」は描かれてる人間がひたすら醜くて読んでてうんざりします。



 この醜さは本多と言うキャラクターに対応したものなのかなあと思う。


 悲恋に苦しむ親友を友情から助けようとした本多君。
 その本多君の前にいた松枝君は美しい青年だった。

 転生した親友を助けるために自分が積み上げてきた地位を投げ打った本多君。
 本多君の前にいたのは理想に燃えた青年だった。

 現在の自分の仕事に真面目に取り組む壮年の本多君の前に表れたのは幼いお姫さま。

 降って湧いた財産を手にして仕事を他人に任せる還暦前の男の前に表れたのは怠惰な女。

 そして少年を養子にして支配しようとした老人本多は、養子にした少年に支配される。

 この物語は転生する松枝を主軸として描かれているかのように見える。

 けど実は、本多こそが主軸で、本多の魂に呼応するかのように親友及びその転生である人間が性格付けされてあらわれていたのではないだろうか。



 読んでてしんどいし、後半醜いし、読後感悪いし、人に勧めない本だと思ってる。


 けど、読んだ後長く尾を引いてます。

 思い返してみればみるほど、あれはああいう意味だったのか、あれはもしやこう解釈できるのかと、色々思ってしまう。

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