『マクベス -シアワセのレシピ-』
2010年5月21日 演劇 コメント (2)THEATRE MOMENTS Vol.14
『マクベス −シアワセのレシピ−』
観て来ました。
目当ては絵理さん。
すごく面白かった!
こーれはイイ!
すでに私が観劇したのが再演だったのですが、まだまだ再演する値打ちがあると思う。
この劇団の他の公演も観たいと思いました。
話がすごく練り込んであるし、小道具の使い方が素晴らしく、役者が上手い人ばかりで観てて本当に気持ちよかったです。
マクベスとマクベス夫人がそれぞれ4人いた。
いわゆる起承転結それぞれって感じ。
こんな演出初めて観ました。
マクベスと夫人の心理変化にあわせて役者が入れ替わって行く。
役者さんはマクベスや夫人をやってる時以外は他の役をやっています。
まずマクベスとは全く関係ない余興から始まる舞台。
それがマクベスのオープニングに続くのがまず上手いなあと思う。
最初は初々しい一番めマクベスと一番め夫人。
この二人の希望に燃えた若さとゆがみのない清らかさが全ての始まり。
一番目マクベスすごく誠実そうで良かった。
将軍って言うより王子様って感じ。
二人の結婚式から始まります。
結婚式で指輪になぞらえて二人の指をつなぐ一本の赤い糸。
この小道具の糸の使い方が本当に上手い。
ごく普通の善良な二人だった筈なのにマクベスは魔女の予言を聞いてしまう。
マクベスと言えばこの予言をする3人の魔女が有名なキャラクターですが、この芝居では魔女は出てきません。
小道具として色を塗られた新聞紙も上手く使われています。
森の場面では、マクベスとバンコーが迷い込んだ時に霧がたちこめてるって設定になってる。
黄色く塗った新聞紙をもった役者達が、うごめいて霧を表現してる。
そしてそれぞれが手に持った新聞紙をくしゃくしゃにして、人外の生き物を表現して、予言を行う。
こんな説明じゃわけわかんないよねー。
すいません。
再演したら観に行って下さい。
さて、予言を聞いたマクベスは夫人に手紙を書く。
新聞紙で作られた紙飛行機を持ってゆっくりと歩く役者。
紙飛行機からは赤い糸がほどけ出る。
紙飛行機は夫人の手に届くと手紙となり、その手紙につながる赤い糸をたどってマクベスは夫人のもとへ帰って行く。
この時二人の間には確かな絆があって、それが赤い糸で表現されている。
予言を夫人に手紙で教えはしたけど、予言の通り王になりたいとはまだ考えてもいないマクベス。
だけど、善良だった筈の夫人の中には「王を殺してでも夫を王にしたい」と言う欲望の種がまかれてしまった。
清らかな一番目夫人が望んではいけない夢の種を心の中に持ってしまうあたりの役者さんがわかりやすくて良かった〜
マクベスを王にしようと思えば王を殺さなきゃならない。
それは悪い事だ。
だけど、人の会話のはしばしから自己を正当する言葉を拾い上げてしまう。
そうしてマクベスが王になるのは悪い事ではないと己をだまそうとしてるあたりのマクベス夫人がとてもいい。
4人のマクベス夫人を演じる役者が出て来て、赤い糸でつながれながら、耳障りのいい言葉を羅列して夫人の欲望を芽生えさせる。
自分の言葉で自分をだまして、悪事に手を染める決意をするマクベス夫人。
ここで役者交代。
二番め夫人。
二番め夫人にそそのかされる一番めマクベス。
夫人にそそのかされながらも王を殺す気になれない一番めマクベス。
そこに二番めマクベスがあらわれます。
二番めマクベスは王を殺してでも王になりたい欲望のマクベス。
この一番めマクベスと二番めマクベスは同時に存在します。
マクベスの中での心の葛藤が、一番めと二番めが同時に存在してる事で表現されてるんだと思う。
二番めマクベスが王に刃をつきつけようとする時に、二番めマクベスに手を差し伸べて引き返すよううながす一番めマクベス。
二番めは一瞬一番めの手をとり引き返そうとするのだけど、寝ていたはずの王が起きて、短剣を手にしたマクベスを見てしまった。
もう戻れないマクベス。
王を殺してしまうマクベス。
ここでの新聞紙と赤い糸を使った演出が上手い。
新聞を引き裂く事で死を表現してるんだけど、その新聞紙でてるてる坊主を作って、赤い糸で首をくくって舞台中央に飾るんだ。
初演は知らないけど、私が観たマクベスでは、二番めマクベスは一人でマクベス夫妻が我欲のために殺人者に堕ちるさまを表現していた。
大変だったろうなあと思うけど、それを一人で演じきったんだから上手いなあと思いました。
三番めマクベスはダンカン王をやってたのと同じ役者さん。
え?
と思ったけど、役者さん11人の内男子5名。
男子5名の内4人がマクベスやって、ダンカン王とバンコーやろうと思ったら、そうなるよねえ。
この方がまた上手い。
三番めマクベスは王を殺してしまった事を苦悩するマクベスです。
三番めマクベスは暗殺者にバンコー殺害を命じる。
この時の三番めマクベスはまだりりしい。
だが、暗殺者がバンコー殺害を知らせて来た時から、マクベスの苦悩は始まる。
バンコーの死も新聞紙てるてる坊主と赤い糸で表現。
この暗殺者が女性なんだけどマルカム王子もやってた人で、かっこよくてときめいた。
マクベスに顔に血がついてると言われて、血をぬぐってる芝居がかっこよかったわ〜〜
(と、男子が5人も出てる芝居で女子にときめく己に疑問を感じないでもない)
バンコーは死んだが、バンコーの息子はまだ生きている。
マクベスの不安は終わらない。
そんなマクベスが宴の席にもどると、マクベスは己の席にバンコーの幻影を見てしまう。
錯乱するマクベス。
それまでりりしかった3番目マクベスの苦悩の演技が迫真にせまってる。
泣いてらっしゃいましたよ。
苦悩する三番めに宴席の客達が声をかける。
他の役として存在していたマクベス夫人達も、夫人としての言葉で発言する。
ここで夫人交代。
三番め夫人はお待ちかねの絵理さんです。
きゃー。
三番め夫人はいきなり三番めマクベスを平手打ち。
宴席にバンコーの幻影を見て錯乱したマクベスを落ち着かせるためなんだけど、えらいりりしいな、三番め夫人。
これは初演もそういう演出だったのか、絵理さんが三番めだからなのかどっちなんだろう。
錯乱して弱々しくなった三番めマクベスをかばい場をおさめる夫人。
二人になって夫を叱咤激励する強い女三番め夫人。
マクベスは妻に弱さをさらけだす。
弱さをさらけだしならが、己の悪行の原因を全て妻になすりつける。
妻の言葉で王を殺してしまったんだと。
ここが惜しいと言うか、マクベス夫人の言葉でマクベスが王殺しを決意するあたりの表現が残念な感じだったので、ただのマクベスの逆恨みに聞こえないでもない。
夫の逆恨みにうろたえる夫人。
夫人はこの時まで夫がそんな気持ちだとは知らなかったんだろう。
前の場面の宴席のテーブルが、2点で直角に折られた赤い糸で表現されていた。
その赤い糸がそのままこの場面まで残されていて、床に残されている。
その赤い糸で囲まれた中にいるマクベス。
夫人がマクベスにかけよるけれど、マクベスは赤い枠から出てこない。
マクベスは赤い枠の中に夫人をいれない。
この場面の赤い視覚はマクベスの閉ざされた心なのか。
赤い枠の内と外で顔をつきあわせながらマクベスは妻をののしる。
落ち着いた静かな声で妻が悪いと言い募る。
目の前の夫の言葉になすすべのない夫人。
夫人はマクベスに腕を掴まれてたかな?
ラブシーンと言ってもいいくらいの接近を見せながら、表現されているのは心のすれ違い。
もどかしい。
夫人はマクベスを愛しているのに、マクベスはもう夫人の言葉を聞こうともしない。
マクベスの妻への憎しみ、夫人のマクベスへの愛情。
マクベスは退場し、入れ違いに赤い枠の中に夫人を叩き込む。
夫の心変わりに涙する夫人。
夫人が取り出したのはかつて夫がくれた手紙。
夫人だけにと打ち明けた予言の手紙。
その手紙を読み返しながら、指で夫の文字をつたいながら、夫人は泣く。
夫人は手紙を抱きしめる。
せつない。
台詞はない。
手紙の中の文字を指でたどる仕草に過去の二人の愛情の深さが読める。
手紙を抱きしめる夫人の仕草で、今なお深い妻の愛情の深さが読める。
泣けた。
ここは泣けた。
4人の夫人の中で、もしかしたら三番めが一番の泣き所、美味しいところだったのかと思う。
手紙を抱きしめてむせびなく絵理さんはとても素晴らしく、絵理さんがやるのが3番目で良かったと思う。
(いや、たぶん、どこの夫人やっててもそう思うんだろうなーとは思うけど)
そして場面が変わると四番めマクベスと四番め夫人。
たぶん、4人の夫人の中で一番難しい夫人は四番めだと思う。
四番め夫人には台詞はなくて、ずっと「らーらーらー」って歌ってる。
夫人の声なんか聞いてもいない四番めマクベスのすぐ後で歌い続ける夫人。
夫人の手の中にはぐしゃぐしゃになった赤い糸。
夫人はせいいっぱい手を差し伸べて、赤い糸をマクベスに差し出して歌うのに、マクベスは夫人を振り向きもしない。
ここの夫人もまた泣かせる。
必死の夫人の歌声が、もうマクベスに届かない。
夫人は赤い糸を床に落として退場。
舞台の上で引き裂かれる新聞。
夫人の死の知らせ。
動じないマクベス。
そしてマクベスは床に堕ちた赤い糸をふりむきもせず、ゴミ箱の中の新聞紙をあさる。
「確かなもの、確かなもの」
新聞(言葉)の中から確かなものを探すマクベス。
予言(言葉)で人生を踏み外しながら、それでもなお言葉の中に確かなものを探すマクベス。
ふりむけばそこには赤い糸(確かな夫婦の絆)があるのに。
ここのマクベスは哀れで切なくてたまらない。
マクベスが必死に確かなものを探そうとすればするほど、その人間の愚かさから目を背けたくなる。
言葉に翻弄されるマクベスの最後の表現はマクベスが必死であればあるほど残酷だ。
他の役者達は新聞を読んで、ありとあらゆる情報をマクベスに提示する。
マクベスは自分に都合の悪い情報は否定し都合の良い情報(新聞紙)には飛びつく。
やがては、どうでもいい、うさんくさい情報(新聞紙)にも飛びつく。
そしてたくさんの新聞紙を身にまとい、舞台の上を円を描いて走り続けるマクベス。
だがやがて、マクベスを破滅に導く情報が提示された時、マクベスは走るのをやめ、身にまとっていた新聞紙は地に落ちる。
マクベスが己を鎧していた新聞紙を失った時がマクベスの終焉。
マルカム王子がマクベスを討ち果たし、感動的なラスト。
マルカム王子が殺戮者マクベスがいなくなり平和が来たと感動的に告げる。
マクベスは憎き暴君マクベス夫人は稀代の悪女とののしられる。
そんなマルカム王子の言葉でしめくくられた芝居の最後には、再び一番めマクベスと一番めマクベス夫人が背中を見せてあらわれる。
「幸せにするよ」
「ありがとうマクベス」
冒頭の結婚式での台詞。
憎き暴君と稀代の悪女のかつての姿。
終り。
面白かったー。
赤い糸の使い方が本当に上手くて。
四番めマクベスは殺戮者となっている。
それをたくさんの赤い糸でくくられた新聞てるてる坊主の登場であらわしていた。
テーブルは横一文字に張った赤い糸であらわしてるし、血のりも赤い糸で表現してた。
心理状態だけでなくて、色んなものを赤い糸で表現してるのが上手いなーと思いました。
それに新聞紙。
最初は普通に上手いなあと思ってたんだけど、四番めマクベスが「確かなもの」を探して新聞紙をあさってる時に「だから新聞紙だったのか」と思い至る。
赤い糸を見向きもせずに新聞をあさる様は本当に見事だった。
絵理さんはマクベス夫人をやってない時はあれこれやってましたが、なんでああ男らしくりりしんだろう。笑顔。
宴席の客とかで出てたりもしたんだけど、あれは男子設定だったように思う。
男役ってわけじゃないですけども。
絵理さんの女優デビューがこんな面白い芝居で重要な役だった事が嬉しい。
でも手放しで面白かったわけでもなくて、一カ所と言うか二カ所わかんない場面もありました。
相撲取りと整体師の小さなお笑い場面が二つある。
このお笑い場面がなんであるのか、それは私にはわからなかった。
客席には絵理さんファンの顔見知りがけっこういたので、あれは何なのか?
と話題に出してみたけど、誰からも納得できる答えは返って来なかった。
「あの時の一言で人生が変わった」とか「生きると言う事はゆがむと言う事」とかお話に絡んだ台詞は言われてはいた。
けど、あの場面なんであったのか、今思い返してもよくわからない。
これが宝塚とかならお話に必要のない場面が挿入されても
「衣装替えや舞台装置転換の時間稼ぎ」
だと思うから気にしないんだけど。
このマクベスは全員お揃いの衣装を着たきりだし、転換する舞台装置なんてない。
「息抜きの場面が欲しかったんじゃないの?」
と隣で見てた知人は言ってたけど、それにしても相撲取りと片言でしゃべる整体師でなくていいだろう。
マクベスに出てくる登場人物を誰かお笑い部門でいれてもいいんじゃないかと思うんだけど。
私には息抜きの場面と言うよりは、せっかくのマクベスの世界観が切断されてしまって惜しい気もしたんだけど。
この脚本を書いた人が無駄な場面を無闇に挿入したとは思えないから、何かしらの考えがあって何かしらの意味があるんだろうとは思う。
でも私には意味がわからなかった。
ちょっと残念。
マクベス夫人に「幸せにするよ」とマクベスが言った結婚式から始まるお話。
描かれていたのは二人の破滅。
そしてタイトルには−シアワセのレシピー
なんとも皮肉なタイトル。
☆
これは芝居とは関係ないんだけど、久しぶりで絵理さんファンにわんさか会えました。
主に劇場そばのデニーズで。笑。
なんかその劇場の観劇のチケット半券持ってると100円割引があったんで吸い込まれるようにデニーズに入ったら、あっちのテーブルにも知り合い、こっちのテーブルにも知り合い。
こういう、観劇に来たら知り合いいっぱいって感じは久しぶり〜
観劇後にご飯食べながら慣れたメンツで今観た芝居の感想をきゃあきゃあ言うのはいいもんだねえ〜〜〜
入り待ちや出待ちしたいけど、案内が無かったので無いのかな〜と思ってた。
そしたら、観劇後に出ようとしたらロビーに役者さんがあちこち立ってて、それぞれのファンやお知り合いと歓談なさってました。
びっくりー。
連れが小劇場はこんなもんだよって教えてくれたけど、私だって小劇場初めてなわけじゃないけど、こんなの初めて〜〜〜〜
わあいわあい、久しぶりで絵理さんとお話できちゃった〜〜〜〜〜〜舞い上がる〜〜〜〜嬉〜〜〜〜〜
千秋楽は鳴海じゅんさんが観劇にいらしてた。
「鳴海さんの後から行こう、鳴海さんが絵理さんと話してるのを遠くから眺めたい」
と煩悩炸裂な私は連れを引き止めのろのろと進み、絵理さんにみつからないように遠巻きに眺めてましたら。
あの人たちって、何故か挨拶で抱きつき合うよね。笑顔。
鳴海さんと絵理さんの包容。
「いいもんみた・・・」
とつぶやいたのは私ではなく連れだった。
うむ。
座席は自由席で、番号札をもらった順に中に入って席を選べる。
気のよさそうな青年が番号札を受け取ってくれたんだけど、この方がバンコーやってた方でした。
バンコー、芝居が始まるとちょーかっこいいのに、芝居の前はどこぞのレストランのウエイターのよう。
芝居の前は座長さんが飴を客席に配ってました。
100分ほどの芝居の前に、30分も客席で接待してたら体力的にきつそうな気がする。
すごいパワーだ。
客席と役者の距離がとても近いお芝居だった。
これが小劇場ってものならば、もし私が小劇場がある都会に住んでいたならば、はまったかもしれない。
とても良いお芝居を観て来ました。
冗文におつきあい下さりありがとうございました。
『マクベス −シアワセのレシピ−』
観て来ました。
目当ては絵理さん。
すごく面白かった!
こーれはイイ!
すでに私が観劇したのが再演だったのですが、まだまだ再演する値打ちがあると思う。
この劇団の他の公演も観たいと思いました。
話がすごく練り込んであるし、小道具の使い方が素晴らしく、役者が上手い人ばかりで観てて本当に気持ちよかったです。
マクベスとマクベス夫人がそれぞれ4人いた。
いわゆる起承転結それぞれって感じ。
こんな演出初めて観ました。
マクベスと夫人の心理変化にあわせて役者が入れ替わって行く。
役者さんはマクベスや夫人をやってる時以外は他の役をやっています。
まずマクベスとは全く関係ない余興から始まる舞台。
それがマクベスのオープニングに続くのがまず上手いなあと思う。
最初は初々しい一番めマクベスと一番め夫人。
この二人の希望に燃えた若さとゆがみのない清らかさが全ての始まり。
一番目マクベスすごく誠実そうで良かった。
将軍って言うより王子様って感じ。
二人の結婚式から始まります。
結婚式で指輪になぞらえて二人の指をつなぐ一本の赤い糸。
この小道具の糸の使い方が本当に上手い。
ごく普通の善良な二人だった筈なのにマクベスは魔女の予言を聞いてしまう。
マクベスと言えばこの予言をする3人の魔女が有名なキャラクターですが、この芝居では魔女は出てきません。
小道具として色を塗られた新聞紙も上手く使われています。
森の場面では、マクベスとバンコーが迷い込んだ時に霧がたちこめてるって設定になってる。
黄色く塗った新聞紙をもった役者達が、うごめいて霧を表現してる。
そしてそれぞれが手に持った新聞紙をくしゃくしゃにして、人外の生き物を表現して、予言を行う。
こんな説明じゃわけわかんないよねー。
すいません。
再演したら観に行って下さい。
さて、予言を聞いたマクベスは夫人に手紙を書く。
新聞紙で作られた紙飛行機を持ってゆっくりと歩く役者。
紙飛行機からは赤い糸がほどけ出る。
紙飛行機は夫人の手に届くと手紙となり、その手紙につながる赤い糸をたどってマクベスは夫人のもとへ帰って行く。
この時二人の間には確かな絆があって、それが赤い糸で表現されている。
予言を夫人に手紙で教えはしたけど、予言の通り王になりたいとはまだ考えてもいないマクベス。
だけど、善良だった筈の夫人の中には「王を殺してでも夫を王にしたい」と言う欲望の種がまかれてしまった。
清らかな一番目夫人が望んではいけない夢の種を心の中に持ってしまうあたりの役者さんがわかりやすくて良かった〜
マクベスを王にしようと思えば王を殺さなきゃならない。
それは悪い事だ。
だけど、人の会話のはしばしから自己を正当する言葉を拾い上げてしまう。
そうしてマクベスが王になるのは悪い事ではないと己をだまそうとしてるあたりのマクベス夫人がとてもいい。
4人のマクベス夫人を演じる役者が出て来て、赤い糸でつながれながら、耳障りのいい言葉を羅列して夫人の欲望を芽生えさせる。
自分の言葉で自分をだまして、悪事に手を染める決意をするマクベス夫人。
ここで役者交代。
二番め夫人。
二番め夫人にそそのかされる一番めマクベス。
夫人にそそのかされながらも王を殺す気になれない一番めマクベス。
そこに二番めマクベスがあらわれます。
二番めマクベスは王を殺してでも王になりたい欲望のマクベス。
この一番めマクベスと二番めマクベスは同時に存在します。
マクベスの中での心の葛藤が、一番めと二番めが同時に存在してる事で表現されてるんだと思う。
二番めマクベスが王に刃をつきつけようとする時に、二番めマクベスに手を差し伸べて引き返すよううながす一番めマクベス。
二番めは一瞬一番めの手をとり引き返そうとするのだけど、寝ていたはずの王が起きて、短剣を手にしたマクベスを見てしまった。
もう戻れないマクベス。
王を殺してしまうマクベス。
ここでの新聞紙と赤い糸を使った演出が上手い。
新聞を引き裂く事で死を表現してるんだけど、その新聞紙でてるてる坊主を作って、赤い糸で首をくくって舞台中央に飾るんだ。
初演は知らないけど、私が観たマクベスでは、二番めマクベスは一人でマクベス夫妻が我欲のために殺人者に堕ちるさまを表現していた。
大変だったろうなあと思うけど、それを一人で演じきったんだから上手いなあと思いました。
三番めマクベスはダンカン王をやってたのと同じ役者さん。
え?
と思ったけど、役者さん11人の内男子5名。
男子5名の内4人がマクベスやって、ダンカン王とバンコーやろうと思ったら、そうなるよねえ。
この方がまた上手い。
三番めマクベスは王を殺してしまった事を苦悩するマクベスです。
三番めマクベスは暗殺者にバンコー殺害を命じる。
この時の三番めマクベスはまだりりしい。
だが、暗殺者がバンコー殺害を知らせて来た時から、マクベスの苦悩は始まる。
バンコーの死も新聞紙てるてる坊主と赤い糸で表現。
この暗殺者が女性なんだけどマルカム王子もやってた人で、かっこよくてときめいた。
マクベスに顔に血がついてると言われて、血をぬぐってる芝居がかっこよかったわ〜〜
(と、男子が5人も出てる芝居で女子にときめく己に疑問を感じないでもない)
バンコーは死んだが、バンコーの息子はまだ生きている。
マクベスの不安は終わらない。
そんなマクベスが宴の席にもどると、マクベスは己の席にバンコーの幻影を見てしまう。
錯乱するマクベス。
それまでりりしかった3番目マクベスの苦悩の演技が迫真にせまってる。
泣いてらっしゃいましたよ。
苦悩する三番めに宴席の客達が声をかける。
他の役として存在していたマクベス夫人達も、夫人としての言葉で発言する。
ここで夫人交代。
三番め夫人はお待ちかねの絵理さんです。
きゃー。
三番め夫人はいきなり三番めマクベスを平手打ち。
宴席にバンコーの幻影を見て錯乱したマクベスを落ち着かせるためなんだけど、えらいりりしいな、三番め夫人。
これは初演もそういう演出だったのか、絵理さんが三番めだからなのかどっちなんだろう。
錯乱して弱々しくなった三番めマクベスをかばい場をおさめる夫人。
二人になって夫を叱咤激励する強い女三番め夫人。
マクベスは妻に弱さをさらけだす。
弱さをさらけだしならが、己の悪行の原因を全て妻になすりつける。
妻の言葉で王を殺してしまったんだと。
ここが惜しいと言うか、マクベス夫人の言葉でマクベスが王殺しを決意するあたりの表現が残念な感じだったので、ただのマクベスの逆恨みに聞こえないでもない。
夫の逆恨みにうろたえる夫人。
夫人はこの時まで夫がそんな気持ちだとは知らなかったんだろう。
前の場面の宴席のテーブルが、2点で直角に折られた赤い糸で表現されていた。
その赤い糸がそのままこの場面まで残されていて、床に残されている。
その赤い糸で囲まれた中にいるマクベス。
夫人がマクベスにかけよるけれど、マクベスは赤い枠から出てこない。
マクベスは赤い枠の中に夫人をいれない。
この場面の赤い視覚はマクベスの閉ざされた心なのか。
赤い枠の内と外で顔をつきあわせながらマクベスは妻をののしる。
落ち着いた静かな声で妻が悪いと言い募る。
目の前の夫の言葉になすすべのない夫人。
夫人はマクベスに腕を掴まれてたかな?
ラブシーンと言ってもいいくらいの接近を見せながら、表現されているのは心のすれ違い。
もどかしい。
夫人はマクベスを愛しているのに、マクベスはもう夫人の言葉を聞こうともしない。
マクベスの妻への憎しみ、夫人のマクベスへの愛情。
マクベスは退場し、入れ違いに赤い枠の中に夫人を叩き込む。
夫の心変わりに涙する夫人。
夫人が取り出したのはかつて夫がくれた手紙。
夫人だけにと打ち明けた予言の手紙。
その手紙を読み返しながら、指で夫の文字をつたいながら、夫人は泣く。
夫人は手紙を抱きしめる。
せつない。
台詞はない。
手紙の中の文字を指でたどる仕草に過去の二人の愛情の深さが読める。
手紙を抱きしめる夫人の仕草で、今なお深い妻の愛情の深さが読める。
泣けた。
ここは泣けた。
4人の夫人の中で、もしかしたら三番めが一番の泣き所、美味しいところだったのかと思う。
手紙を抱きしめてむせびなく絵理さんはとても素晴らしく、絵理さんがやるのが3番目で良かったと思う。
(いや、たぶん、どこの夫人やっててもそう思うんだろうなーとは思うけど)
そして場面が変わると四番めマクベスと四番め夫人。
たぶん、4人の夫人の中で一番難しい夫人は四番めだと思う。
四番め夫人には台詞はなくて、ずっと「らーらーらー」って歌ってる。
夫人の声なんか聞いてもいない四番めマクベスのすぐ後で歌い続ける夫人。
夫人の手の中にはぐしゃぐしゃになった赤い糸。
夫人はせいいっぱい手を差し伸べて、赤い糸をマクベスに差し出して歌うのに、マクベスは夫人を振り向きもしない。
ここの夫人もまた泣かせる。
必死の夫人の歌声が、もうマクベスに届かない。
夫人は赤い糸を床に落として退場。
舞台の上で引き裂かれる新聞。
夫人の死の知らせ。
動じないマクベス。
そしてマクベスは床に堕ちた赤い糸をふりむきもせず、ゴミ箱の中の新聞紙をあさる。
「確かなもの、確かなもの」
新聞(言葉)の中から確かなものを探すマクベス。
予言(言葉)で人生を踏み外しながら、それでもなお言葉の中に確かなものを探すマクベス。
ふりむけばそこには赤い糸(確かな夫婦の絆)があるのに。
ここのマクベスは哀れで切なくてたまらない。
マクベスが必死に確かなものを探そうとすればするほど、その人間の愚かさから目を背けたくなる。
言葉に翻弄されるマクベスの最後の表現はマクベスが必死であればあるほど残酷だ。
他の役者達は新聞を読んで、ありとあらゆる情報をマクベスに提示する。
マクベスは自分に都合の悪い情報は否定し都合の良い情報(新聞紙)には飛びつく。
やがては、どうでもいい、うさんくさい情報(新聞紙)にも飛びつく。
そしてたくさんの新聞紙を身にまとい、舞台の上を円を描いて走り続けるマクベス。
だがやがて、マクベスを破滅に導く情報が提示された時、マクベスは走るのをやめ、身にまとっていた新聞紙は地に落ちる。
マクベスが己を鎧していた新聞紙を失った時がマクベスの終焉。
マルカム王子がマクベスを討ち果たし、感動的なラスト。
マルカム王子が殺戮者マクベスがいなくなり平和が来たと感動的に告げる。
マクベスは憎き暴君マクベス夫人は稀代の悪女とののしられる。
そんなマルカム王子の言葉でしめくくられた芝居の最後には、再び一番めマクベスと一番めマクベス夫人が背中を見せてあらわれる。
「幸せにするよ」
「ありがとうマクベス」
冒頭の結婚式での台詞。
憎き暴君と稀代の悪女のかつての姿。
終り。
面白かったー。
赤い糸の使い方が本当に上手くて。
四番めマクベスは殺戮者となっている。
それをたくさんの赤い糸でくくられた新聞てるてる坊主の登場であらわしていた。
テーブルは横一文字に張った赤い糸であらわしてるし、血のりも赤い糸で表現してた。
心理状態だけでなくて、色んなものを赤い糸で表現してるのが上手いなーと思いました。
それに新聞紙。
最初は普通に上手いなあと思ってたんだけど、四番めマクベスが「確かなもの」を探して新聞紙をあさってる時に「だから新聞紙だったのか」と思い至る。
赤い糸を見向きもせずに新聞をあさる様は本当に見事だった。
絵理さんはマクベス夫人をやってない時はあれこれやってましたが、なんでああ男らしくりりしんだろう。笑顔。
宴席の客とかで出てたりもしたんだけど、あれは男子設定だったように思う。
男役ってわけじゃないですけども。
絵理さんの女優デビューがこんな面白い芝居で重要な役だった事が嬉しい。
でも手放しで面白かったわけでもなくて、一カ所と言うか二カ所わかんない場面もありました。
相撲取りと整体師の小さなお笑い場面が二つある。
このお笑い場面がなんであるのか、それは私にはわからなかった。
客席には絵理さんファンの顔見知りがけっこういたので、あれは何なのか?
と話題に出してみたけど、誰からも納得できる答えは返って来なかった。
「あの時の一言で人生が変わった」とか「生きると言う事はゆがむと言う事」とかお話に絡んだ台詞は言われてはいた。
けど、あの場面なんであったのか、今思い返してもよくわからない。
これが宝塚とかならお話に必要のない場面が挿入されても
「衣装替えや舞台装置転換の時間稼ぎ」
だと思うから気にしないんだけど。
このマクベスは全員お揃いの衣装を着たきりだし、転換する舞台装置なんてない。
「息抜きの場面が欲しかったんじゃないの?」
と隣で見てた知人は言ってたけど、それにしても相撲取りと片言でしゃべる整体師でなくていいだろう。
マクベスに出てくる登場人物を誰かお笑い部門でいれてもいいんじゃないかと思うんだけど。
私には息抜きの場面と言うよりは、せっかくのマクベスの世界観が切断されてしまって惜しい気もしたんだけど。
この脚本を書いた人が無駄な場面を無闇に挿入したとは思えないから、何かしらの考えがあって何かしらの意味があるんだろうとは思う。
でも私には意味がわからなかった。
ちょっと残念。
マクベス夫人に「幸せにするよ」とマクベスが言った結婚式から始まるお話。
描かれていたのは二人の破滅。
そしてタイトルには−シアワセのレシピー
なんとも皮肉なタイトル。
☆
これは芝居とは関係ないんだけど、久しぶりで絵理さんファンにわんさか会えました。
主に劇場そばのデニーズで。笑。
なんかその劇場の観劇のチケット半券持ってると100円割引があったんで吸い込まれるようにデニーズに入ったら、あっちのテーブルにも知り合い、こっちのテーブルにも知り合い。
こういう、観劇に来たら知り合いいっぱいって感じは久しぶり〜
観劇後にご飯食べながら慣れたメンツで今観た芝居の感想をきゃあきゃあ言うのはいいもんだねえ〜〜〜
入り待ちや出待ちしたいけど、案内が無かったので無いのかな〜と思ってた。
そしたら、観劇後に出ようとしたらロビーに役者さんがあちこち立ってて、それぞれのファンやお知り合いと歓談なさってました。
びっくりー。
連れが小劇場はこんなもんだよって教えてくれたけど、私だって小劇場初めてなわけじゃないけど、こんなの初めて〜〜〜〜
わあいわあい、久しぶりで絵理さんとお話できちゃった〜〜〜〜〜〜舞い上がる〜〜〜〜嬉〜〜〜〜〜
千秋楽は鳴海じゅんさんが観劇にいらしてた。
「鳴海さんの後から行こう、鳴海さんが絵理さんと話してるのを遠くから眺めたい」
と煩悩炸裂な私は連れを引き止めのろのろと進み、絵理さんにみつからないように遠巻きに眺めてましたら。
あの人たちって、何故か挨拶で抱きつき合うよね。笑顔。
鳴海さんと絵理さんの包容。
「いいもんみた・・・」
とつぶやいたのは私ではなく連れだった。
うむ。
座席は自由席で、番号札をもらった順に中に入って席を選べる。
気のよさそうな青年が番号札を受け取ってくれたんだけど、この方がバンコーやってた方でした。
バンコー、芝居が始まるとちょーかっこいいのに、芝居の前はどこぞのレストランのウエイターのよう。
芝居の前は座長さんが飴を客席に配ってました。
100分ほどの芝居の前に、30分も客席で接待してたら体力的にきつそうな気がする。
すごいパワーだ。
客席と役者の距離がとても近いお芝居だった。
これが小劇場ってものならば、もし私が小劇場がある都会に住んでいたならば、はまったかもしれない。
とても良いお芝居を観て来ました。
冗文におつきあい下さりありがとうございました。
コメント
マルカム王子は芸達者さんで素晴らしかったです。私もときめきましたよん♪
ホントに絵理ちゃん出て無くても(出て欲しいけど)また観にいきたいと思う劇団でした。
corichのコンテスト、グランプリ取るといいな~(^^)
続き、楽しみにしてます。
上京した値打ちはありましたとも。
(観劇時以外ホテルにこもってネームしてたのはともかく)
他の小劇場のお芝居観てないから比較できないんだけど、グランプリとれるもんならとって欲しいねえ。