金持ちでも王侯貴族でも無い一般庶民が、ちょっとがんばって働いて小金を手にすれば世界中の美味珍味が食べ放題。
 生まれた時から当たり前にある幸福。

 こんな幸福、どれほどの値打ちがある事か。

 100年もさかのぼらないで、日本には食べたいだけ食べられない頃があった。
 ほとんどの日本人がたらふく食べたいだけ食べられるようになったのって、本当にここ数十年の話なんじゃないの?

 うちの母は農家の育ちで、食べるものは充分あったと言う。
 それでも海の無い村だったので、祖父が市場に野菜を売りに行った帰りにトロ箱で買ってくるサンマがたまのごちそうで、トロ箱いっぱいのサンマと言ってもご近所に分けるし昔の事で家族も多いしで、食べ放題と言うわけでもなかったそうで。

 肉は家で飼ってる鶏。
 盆と正月になると鶏を締めたすき焼きが定番のごちそうだったそうです。

 甘いお菓子が欲しければ伯父と叔父と三人掛かりで、ドーナツを作ったそうだ。
 だがそれすらも、家から麦をもって粉引き屋さんで小麦粉にしてもらう所からはじまったと言う。
 兄弟三人で自転車の荷台いっぱいに麦を製粉所にもってって、粉にひいてもらう。
 お金を払うんじゃなくて、手数料分小麦粉を引かれるので、手にするのは煎餅の空き缶いっぱい分の小麦粉。
 家の鶏小屋から売り物にならない卵をとってくる。
 砂糖はおばあちゃんがくれたそう。
 何しろ小麦粉をひいてもらう所から始るので、一日がかり。
 そうやって作ったドーナツだけど、やはり家族全員で分けるのでたらふく食べられるわけでもなかったそうな。
 母は五人兄弟だったし、大所帯だったと思うので煎餅の空き缶一つ分の小麦粉で出来るドーナツじゃ、一人一個が関の山だったんじゃなかろうか。
 芋や無花果、柿などは食べ放題に食べられたと思うけど。
 親の時代でそれだったんだよ。

 ほんの一世代前でそれ。

 たぶん、母の世代でも、街に住んでたら話は違ったんだろうけど、田舎じゃドーナツ食べるのに兄弟三人一日がかり。
 いや、それはそれで良い思い出だと思うし、母ちゃん幸せな子供だったんだろなーとは思うけど。

 それに比べて現代日本の食料事情。

 恵まれてると思う。

 太ってると自己管理出来てないって言われますし、そうだろうなと思います。
 肥満は健康に悪い。
 体重があるとそれだけで、足腰に負担も大きいのはわかってる。

 でも別に私、太っててもいいです。
 寿命が一年二年縮むくらいの不健康なら、食べたいだけ食べたい物を食べたいよ。
 この腹のたわわな肉は私の幸せ日記だよ。

 本当に、ちょっと真面目に働くだけで、月に1〜2回家族でランチに行って老いた母親に好きな物を好きなだけ注文してやれる。
 元気になりたいとかうなりながら、好きなお店にご飯に出かける。
 そこらへんのスーパーで売ってるくらいの食材なら食べたいものが買える。
 一塊で数百円するパンを高いなあと思いつつも、数百円で買える幸せがある贅沢。

 デブのいいわけみたいというか、まあ、そうなんだけど。

 私美味しいものお腹いっぱい食べる幸せの結果として太るんなら、太ってる人生でもいいやーって思ってます。

 うん。

 太ってる。

 でも幸せでぶぶ。



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